セネガル水産アドバイザーの仕事

 

セネガル共和国 JICA専門家 水産行政アドバイザー
長島 聡

 

セネガルというと、まず頭に浮かぶのはパリダカのゴール、ダカールでないでしょうか?で、セネガルはどこにあるの?というと、意外に知らない人が多いかもしれません。セネガルは西アフリカに位置する国で、この周辺では中心となる大国と位置づけられています。

 

私は、このセネガルにJICAの水産行政アドバイザーとして2年間の予定で派遣されています。私が配属されているのは海洋経済・海運・漁業・コミュニティ保護区省という、名前だけではいったい何をやっているのかまったく良くわからない省ですが、要は海関連の局全部を包含した官庁です。この省の官房技術顧問というのが、私の肩書きなのです。

 

現在の主な業務は、過去に日本がセネガルに対して実施した水産分野案件のフォローアップと、新規水産分野の案件についての事前調査、後方支援です。

 

過去20年以上にわたって日本はセネガルの水産流通分野、水産資源管理分野、水産加工分野について、多くの支援をしてきました。そのため、セネガルのほぼ北から南まで(ガンビアとの国境近くまで)の海岸線に日本が援助しているサイトが点在しているため、そこをすべて回るだけでも一苦労です。派遣から5ヶ月経ちましたが、出張には15回以上行きましたが、まだ全部回りきれていません。ただ、少しずつセネガルの漁村のことがわかり始めてきました。

 

セネガルの漁業の問題点は、乱獲による資源の減少です。旱魃で耕地を失った多くの農民が生活の糧を求めて海岸線へ移住したり、急激に人口が増えたりした結果、かつてなかったほどの資源への圧力がかかり、特に底魚資源の減少が深刻です。本来ならば、政府が資源管理を行っていかなければならないのですが、それを難しくしている原因の一つに、移動漁民の存在があります。

 

ニャニンの海岸

 

移動漁民とは、魚を求めて季節移動をする漁民達のことで、セネガルの北部に位置するサンルイという街からの移動漁民が有名です。彼らは、資源がなくなれば他に移ればいいため、資源を管理して獲っていこうという意識が希薄です。また、良い教育を受けさせてもなかなかセネガル国内で仕事が見つからないため、彼らは小さいうちから自分の子供を漁師として育てるため、さらに移動漁民が増加するという悪循環が続いています。ただ、セネガルの資源管理はまったくお先真っ暗かというと、そういうわけでもなく、希望の光も見えています。

 

独立行政法人国際協力機構(JICA)が2004年~2007年にかけて実施した漁業資源評価・管理計画調査のパイロットプロジェクトサイトの一つニャニンでは、プロジェクト終了後もタコ資源回復のためのタコ壷の沈設事業を継続しています。昨年は、前任の専門家が1,000個分、ニャニンの資源管理委員会が600個分の予算を出して1,600個のタコ壷の沈設を行いました。本年は、資源管理委員会が自分たちの分を900個に増やし、JICAからの支援は逆に昨年よりも減らす予定です。それでも、資源管理委員会のメンバーたちは、本年の目標は3,000個と意気込んでいます。本年は漁業関連団体からの支援を取り付けるため、自分達の活動を紹介したレターを作成し、直接訪問も行っています。私以上に私のカウンターパートが熱心に彼らの活動を手伝っており、私が手伝ったことといえば、タコ壷のお金を出す以外には、活動を紹介するレターを作ったほうが良いと提案したことと、そのレターを印刷してあげたこと。ほっておいてもセネガル人だけで物事が進んでいくという理想的な形となっています。まだまだ、彼らはよちよち歩きの状態ですが、いずれ彼らが自立して、セネガルの資源管理のリーダー的存在となってくれることを期待しています。